原宿に死す

お前が消えて喜ぶ者はオールで殴ればすぐに死ぬ

母は死ぬ。無意味に死ぬ。

 母が死のうとしている。

 自殺ではない。今日明日死ににいくという話ではない。ゆっくりと、しかし普通よりもっと加速度的に、死へと走っているだけだ。

 癌と代替療法。これだけ言えばわかるわね苗木くん。

 言い忘れたが、可愛くない話だ。全くブログ主旨に反している。

 

 

 母は、まあ、いわゆる自然派だ。体に良いと聞けば油を全てココナッツオイルに変え、息子の悩みはオーリング療法で解決しようとし、副業として良いからとマルチに手を出そうとし、スマホケースは旭日旗。なんというか、うん、結構な筋金入りである。自然派関係ないのもあるけど要するにそういうひとということだ。

 元から『そういう』人ではあったが、父が失踪し、息子が家を見限り、祖父が亡くなり、祖母と2人だけの家で醸造していったのだろう。何かを。あるいは狂気とも呼べる愚かさを。

 

 癌が見つかったらしい。肺に小さな影。手術でどうにかできる範囲だ。あるいは薬物治療で。そも、日本人は60まで生きていれば半分くらいは癌を発症するものだ(国立がん研究センターより)

 でも多分彼女は手術をしない。医者も信じない。薬物治療なんかもってのほかだろう。温熱治療健康機とやらで癌をなくすのだと豪語している。今はまだレンタル品らしいが、このままならきっと購入までこぎつけるだろう。100万するらしい。泣いちゃうな。なお今日の俺の飯は128円の白菜を限界まで煮込んで薄めた鍋。泣いちゃうな。

 

 数年経てば母は死ぬだろう。小さな癌でも放置すれば命取りになる。母は無意味に身体を温めて、生存率なんて考慮せずに、無為に死ぬだろう。その葬式に僕はいないだろう。行かないと宣言した。「あなたが医者の言うことも聞かず自分に都合のいいことだけ言ってくれるその機会を信奉している限り、僕はあなたに何もしない。顔も見せない。手術や治療にも関わらない。誰が死んだって葬式にも行かない」と言った。

 卑怯な話だ。その代替療法への信仰と息子を天秤にかけさせたのだ。

 だが賭けには負けた。天秤の皿は僕の方には落ちなかった。僕は自然派信仰には勝てなかった。

 

 母が死んでしまうかもしれないことに今更悲しみはない。この苦しみは「自分の言うことが聞き入れられなかった」というだけのわがままから来ているものだ。

 だけど、言わせてもらうならば。僕だって。

 僕だって、自然派を信仰したまま愚かに幸せに生きたかった。

 インターネットで馬鹿にされるようなスピリチュアルな生き方に騙されていたかった。

母と同じものを信じていれば、母に与えられたひどい匂いのハンドクリームでずっと手が荒れていても怒りを覚えなくて済んだ。母の友人の前世占いなんかを真に受けて好きでもない人と結婚して無性愛者である疎外感を受けずに済んだ。代替医療を受け入れられていれば、こうして板挟みの苦しみを得ずに冬の川辺で文章なんか書かずに済んだ。

 

 母は死ぬだろう。僕は最後まで彼女の顔を見ずに生きていくだろう。そうしてゆったりと後悔を人生に溶け込ませて、僕はインターネットで自然派を馬鹿にして生きていくだろう。

誰がためにアイドルは歌う

「俺が桐生院ヴァンのガチ恋粘着獣なんじゃなくて桐生院ヴァンが俺をガチ恋粘着獣にしてるんだよ」とは戦国時代を代表する武将、織田信長の言葉である。ちなみに家臣である明智光秀は「プリンスはメラドにあり」と言って信長を討ったとされるが仔細は定かではない。

かの言葉に込められた意味とは何か?答えはうたの☆プリンスさまっ♪マジLOVELIVE 7th STAGEにあった。


まあ要するに7thライブサイッコ〜〜〜〜〜〜〜〜〜なんだ。2日経つが、未だに翔ちゃんの歌が頭から離れないのでブログを書かざるをえなかった。

自分は配信で見ていたので思う存分Kyun-Kyun!していたが、Colorfuly☆Sparkを生で浴びながらコールできないとかいう拷問がこの世に存在するそうなのでコロナほんと許せねぇよアイツ。放課後校舎裏でシバいてやろうぜ。


だがコロナの影響で恩恵を得たこともある。先述の通り配信の形式で、古参プリンセスの枠を奪わず、邪魔をすることなくライブを楽しめたことだ。

カメラワークもめちゃくちゃ良かった。配信なのにこんなに不満のないカメラワークって存在するんだ……狙い撃ちでBang!でめちゃくちゃ画面割ってくれたし……すごかったよねあそこ……永遠に狙い撃ちでBang!されてぇ……どうにか過去戻ってもう一回くらい狙い撃ちでBang!を浴びれねえかな……

ド素人プリンセス♂兼マイボーイ兼ジェントルマンながらも楽しむ機会を作ってくれたという点では、やはりマジLOVEキングダムという革命を起こしたうたプリだなと思う。マジLOVEキングダムは「全編ライブのアニメ映画」という二次元アイドル界における革命的構成で古参も新規も何度だってアイドルに触れる機会を作ってくれた。ちなみに人生で5回以上劇場で観た映画は現時点でマジLOVEキングダムだけだ。まだ劇場で観たいのだがなんとかならんか。ならん?じゃあHuluで観る。

ちなみに↓はマジLOVEキングダム初見時の感想記事です。ゴリラか何かか?

僕が黒のネイルを買うことを決めた理由 - 原宿に死す https://udur.hatenablog.com/entry/2019/07/11/232948



自分が男で更に無性愛者だからか、恋愛色を一切見せない二次元アイドル像はとても安心する。

だがそれはそれとして、疑似恋愛を提供するタイプの二次元アイドル像もリアリティがあってメチャときめくのだ。

僕はプリンスたちの葛藤を知らない。背景を見たことがない。恋がわからない。

だけど彼らアイドルは愛を歌い、キスを投げ、自分に中に生まれた恋を輝きに還元する。そらもうキスよりすごい歌にもなるってもんよ。(つまりWe love  you, My  princessってコト!?!?)

だから、うたの☆プリンスさまっ♪乙女ゲーム原作で、彼らがプリンスでよかったな、と思うのだ。


ンだからさ〜〜〜〜〜Welcome to UTA☆PRI world!!がもう好きで好きでしょうがないんだワ〜〜〜〜〜〜〜『俺たちはキミへの愛を歌う』が好きじゃないわけないんだワ〜〜〜〜〜〜この場合の『キミ』は春歌ちゃんであり不特定多数のyouであり僕たちであるものとします。

僕が今更言うまでもなくド名曲なのである。プリンセス歴11年のフォロワーに「6年間披露されていなかった」って聞いたがマジか?毎日聴きたい。聴く。買った。(2年前なんで買ってなかったんだっけ……?多分機械に弱すぎてiTunesで探しきれなかったのか……?)

人生にはWelcome to UTA☆PRI world!!が必要な時がある。年度末に迫った手術に鬱になってる時とか。(記事とは関係ないことなので置いておきますが3月に全身麻酔手術します。入院って初めて〜〜)


いやホンマさ〜〜〜〜あんな投げキッス受けるライブ初めてでさ〜〜〜〜〜〜画面越しにヒィヒィ言ってた。隣で見てたプリンセスフォロワーは泣いてた。アイドルってすげえや!!!

普段二次元アイドルのライブを見る際は、演者とキャラクターを明確に分けて見ているし、キャラクターに熱を入れやすい自分は特にそうすべきだと考えている。あえて同一視をすることでエモを摂取する時もあるがその時は自分に手綱をつけて「あえて」という言葉を忘れないようにしている。

それで言うなら、今回は「あえて」同一視をしていたし、それが叶うだけの環境があった。恵まれたカメラワーク、いい意味で二次元的なレーザーやスポットライト。STAR WISHのスポットライトやばなかった?やばいが。やばたにえんだが。アイドルってすげえや!!!!(二度目)


そしてアイドルとの同一視を外して思うことは、高いところ怖いのに気球乗ってくれた木村さんすげえしありがてえなって……まさか飛ぶとは思ってなかった……いやカレイドスコープは飛ぶものだけど人間は飛ばないじゃん……飛んだわ……声優さんってすげえや……

別ジャンルのライブで拝見している声優さんの面々も、そっちとは違う立ち振る舞いをしててほんと……てらしーはすごいぴょんぴょんするしダイキングは幼さを残しながらもクールでミステリアスな雰囲気出してるしたそは綺麗だしなんかほんともう……声優さんってすげえや…………(二度目)

あと舞台で演じている宮野を見るのがほぼ初めてだったんですが、あの人こそまさにパフォーマンスをするために生まれてきた人間だなって思いました。宮野真守ってすげえや。


マジLOVEスターリッシュツアーズ楽しみすぎるな〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!

その時までに絶対黒のネイルチップが欲しい。家事をする身なのでマニキュアを続けることは難しかったが、翔ちゃんのあのカッコいい爪とまたお揃いにしたい。なのでネイルチップ。ぴかぴかに光る爪を見たらきっと心から嬉しくなれる。

あるいはデコネイルもしたい。プリンセスフォロワーが7thのためにカミュ春ネイルにしていたのがメチャ良かった。カミュのシンプルなサインが入った薬指はとても美しかった。

未来の予定を考えるだけでわくわくする。

アイドルって娯楽なんだ。姿を見れば嬉しいし、歌ってくれれば夢を見られる。人生が変わることはなくても明日の気持ちを変えてくれる。明日の気持ちが変われば人生が変わることもあるかもしれない。良い方にか悪い方にかはわからない。だけど遠くから応援できた7thライブが楽しかったのは事実なのだ。楽しかったのならきっと良い方に決まっている。



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多分。

世の中には知らない果物がたくさんある

未知の果物はすこし心が躍る。

未知と言っても大袈裟なものではない。スーパーに行けば時期によっては並んでいるがほとんど食べたことのないすもも、びわ、アボカド(アボカドは果物分類でいいんだよな多分)、その他いろいろなマイナー果物たち。

それより更にマイナーなものもある。一般流通がほとんどされていない野山で取れるような、そしてそれ本当に商業果物と比べてそこまで食べ応えあってうまいか?という小さな実。桑の実やコケモモ、山イチゴ……否、食べれば確かにうまいのだがとにかく実が小さくて栽培するほどのうまみがない、というものだ。通販で手に入ることもあるが、少なくとも僕は苗単位でしか売っているのを見たことがない果物もある。

グミの実だ。


15年前の父がグミの実をどこで摘んできたのか、僕は未だに知らない。


父は週末をパチンコ店で過ごす人だった。とはいえ無理に連れて行かれて車の中に置き去りにされていたわけでもなし、行きたいと言えば動物園や水族館などにはしょっちゅう連れて行ってもらえた。そのどれもが父との二人旅行だった。

僕が父のお気に入りであったことは薄々勘付いていた。

思春期に入り、クラスメートに家族との休日を見られることを何よりもの恥と恐れていた兄は父だけでなく母や僕のことも避けていたからやむを得ないだろう。数年前、父の元同僚と話したことがあるが、みな口を揃えて「梅太郎くんの話をよくしていた」と言っていた。それはすなわち、兄の話はしていないということと同義でもあった。こそばゆいような、気まずいような思いは、どちらに天秤を傾ければいいのかわからないままだ。

妻の両親、田舎の家で強権を持つ妻、距離を置くようになった長男。いわゆるマスオさん状態の父の味方は次男である僕だけだったのだろうか、と考えては、まるでこれではあの頃の父に同情して肩入れしているようなので嫌になる。

父の突然の失踪に対してだって、僕は特に何も思ったことはなかった。本当に、ただの一度も。

思うことがあるのは母だけだった。だから母に「お父さんと連絡は取っているの」と尋ねられれば、馬鹿話に切り替えてなんでもないことのように流すのがルーティンになっている。

実際、父とは連絡をとっていない。連絡先も知らない。

一度だけ、電車で似た人を見かけて息が止まりそうになったことは、ある。



父が失踪するずっと前の、ある日の休日の午後。祖母が夕飯の支度をしているのを待っている間に帰宅して間もない父から二つの小さな赤い実を渡された。

「グミの実だよ」

「グミ?」

それがお菓子のグミでないことはもちろんわかっていたのだが、父が嬉しそうに「お菓子じゃないぞ」と笑っていたので何も言わなかった。

赤くてほんのり黄色がかったその実は本当に綺麗だった。つやつやしていて虫穴など一つもなく、へたの部分に花を寄せると甘い匂いがして、ふっくらとした曲線は絵に描いたようだった。

『完璧な果物』というものがあるのならこれなのだろう、と思うほどにありとあらゆる要素が果物然としていた。生まれて初めて見る小さな木の実だというのに!

食欲というか食を司る感情が幼少期から異常に強いことは最近自覚したが、それでも作り物のように完璧な木の実を口にすることはできなかった。

もらったグミの実はしばらくテーブルの上の大事なもの入れに置いておいた。しかし果物であるからにはカビが生えてくるのも必然の定めであり、完璧な果物であったグミの実はそのフォルムをあっけなく崩壊させてしまった。

カビを爪先で削り取り、消毒もしていない野生の木の実を食べた。甘くて少しだけえぐみと酸味があって、ずっと常温で放置していたからぬるくて、それでも今まで食べたどんな果物とも違う味でなによりも美味しかった。

父は確か、「食べちゃったの」と驚いていた気がする。その驚きが何に対するものだったかは知らない。


あの日、きっと父はパチンコに負けたのだろうと思う。手ぶらで帰る道すがら、林の野生の木か、はたまたどこかの庭からはみ出たグミの木から一粒二粒拝借してきたのだろう。共犯にはなりたくないので法的に問題のない場所からであってほしい。

父はお菓子の類を食べない人だった。実家を思い出すからか果物は喜んで口にしたが、人工の菓子類は眠気覚ましのブラックガム程度しか噛まなかった。

父の車に乗ると時折置かれていた場違いな菓子箱は、きっとほんの少し勝てた日に持って帰ってきて私たち子供にあげるのすら忘れてそのまま置きっぱなしになっていたものだったのだろう。どちらでもポッキーの味は変わらない。


グミの実の旬は梅雨時、春グミと呼ばれる種はちょうど今の時期かららしい。だから思い出したわけではない。だから父の話をしたくなったわけでもない。

本当に、父の対しての感情は何もない。嫌いですらない。きっと、何もかも知らないからだ。

だってあの人はよくわからない人なのだ。高校を辞めた時だって、「中退したのは突然姿を消した私のせいなのでしょう。本当に申し訳なく思っています」と反応に困りまくる手紙が来た。英語ができないからだと反発したいのに、父のフォローをしているみたいになるから本当に嫌でそれだけが困った。

大学に合格したメールを送った時も「心から喜んでいます」とめちゃくちゃ敬語で反応しづらい返信が来た。大学祝いのよくわからんスポーツ腕時計はいつの間にか母に売られてた。

毎年不器用に送られてきた誕生日プレゼントの図書カードも2年前からない。これは普通に悲しい。

やっぱり、父のことはよくわからない。


きっと、これから死ぬまで、父のことは知らないし知ろうと努力することもないと思う。


子供の時は、父の吸っているセブンスターの値段も知らなかった。

いつかはグミの実をもう一度かじってみたい気もするが、それはまだ先でいいとも思える。

僕が黒のネイルを買うことを決めた理由

「アイドルの顔がいいと健康にいい」とはその名高き名軍師諸葛孔明の言葉である。即ちアイドルの顔の良さをより多く摂取できればより健やかということである。つまりカメラワークがいいライブは最高である。


故にマジLOVEキングダム公演は最高だったということである。


同僚と王国に入国してきました(同僚は3回目の入国)(なおこの場合の同僚とはアイマスで知り合った人のことを指します)。

シャイニング事務所及びレイジングエンターテイメントはマジでミリしらだ。嘘だ。翔ちゃんがピンク担当でかわいいのだけ知っている。何を隠そうショタコンだ。他の事務所のかわいい男の子の情報は入ってくる。アイドルの顔がいいと健康にいいが男の子がかわいいと世界が平和になるのである。素晴らしいね。

とはいえ「守ってやる」ってイケメン発言にマジでペンラ振る手が止まったくらい彼がカッコいいことは存じ上げなかったのでやっぱりミリも知らなかった。不覚。めちゃくちゃトキめいてペンラを乙女持ちしてしまった。乙女持ちとは両手を組み胸の前で祈るようにペンラを掲げることである。今名付けた。

ところでレイジングエンターテイメントってもしかして鳳兄弟となんか関係ある?




存在の強度が強い。

と言葉にするとなかなか意味がわからない。せいぜい「存在感がすごい」「リアル」「本当にいるみたい」というのがふさわしい言葉だとは思うが、それもいまいちしっくりくる言葉ではない。だって彼らは「いた」のだ。


ドームで、ステージで、光の中で。

衣装が靡いて、髪が揺れて、カメラに投げキスをして。

ST☆RISHが、QUARTET NIGHTが、HE★VENSが!

僕は2次元のキャラクターではない、男性アイドルを見たのだ!


その証拠が寿嶺二のMCである。

『マイボーイも?』

「……イェー!」

『……んんっ、マイボーイもー!?』

「!!うおーーーーーーーーー!!!!」

この↑流れ見たことあるもん!!!!知ってるもん!!!!あれLVだったもん!!!!人数で言えばどうしても少数派になる男性ファンにも配慮ができる大人のアイドルだったもん!!!!!!!!トトロ見たもん!!!!!!信じて!!!!!!!!!!!!!!

それにFeather in handで風吹いてたもん!!!!水上がる演出もあったもん!!!!!!!!!カメラマンさんあのリフターについて行くの大変そうだなって思ったけど多分アイドルが一番大変だったと思う!!!!!!頑張ったね!!!!!!!!最近若い子が頑張ってるだけで涙出るから正直オープニングから泣いてた!!!!!!!!!ミリしらだけど!!!!!!!!!!!カメラマンは年収2億もらってくれ。

そしてブログ記事を見りゃ分かると思うが一番心を掴まれたのはColorfully☆Sparkだった。かわいい男の子は世界を救う。ポップでパステルは公共の福祉。こっちはきゃりーぱみゅぱみゅ全国コンサートツアー星屑のCHERRY MARTINI最終公演できゃりー様が大きなカクテルグラスにすっぽりと収まって登場した時可愛すぎて泣いたオタクやぞ。カラフルポップなグラスの上で歌う可愛い担当アイドル(カッコいい)なんてそんなん最高なので演出家は年収2億もらってくれ。

でも一番印象に残ったアイドルでいえば桐生院ヴァン様がめちゃくちゃかっこよかった。先日ヴァン様のダイマが流れてきたので名前だけはなんとなく知っていたが実際に見たらめちゃくちゃかっこよかった。UP-DOWN-UP!に至っては自分がお姫様抱っこされたかと思ったくらいめちゃくちゃかっこよかった。特に横顔がめちゃくちゃかっこよかった。アイドルの顔がいいと健康にいい(3度目)。桐生院ヴァン様は事務所から毎秒2億もらってくれ。


見様見真似でコールをしながら僕は笑っていた。

アイドルとは、そうだった、娯楽なのだ。

僕は彼らの葛藤を知らない。背景を見たことがない。恋がわからない。

それでもステージの上で歌うその姿を一方的に見ることができる。誰もが星の光に熱狂したがっている。

そしてドームの天井が開いた瞬間、そこに光はあった。

時間にすれば20時過ぎだったろうか。ちょうど外でも日は落ち、夜になっていた頃だ。

満点の星空を駆ける一筋の流星を、翔ちゃんと僕は同時に見たのだ。

それこそが彼らがこの世界に存在する証左だった。


存在する偶像に対しできることは何だろうか。アンコールの幕も下りた時、ふと思った。

この熱を何かに昇華したかった。彼らのことをまだ知らない僕の言葉だけではあまりにも出力が足りなかった。未来の自分へのメッセージにするには、あと一歩、何かが必要だった。

マイクを握る翔ちゃんの爪の先が思い出された。マニキュアという女性性を表す装飾品で、男性性を主張する力強い黒が彩られていたことを。

そうだ、「カワイイ」とは、素敵なあの子を真似することから始まるのだ。


そして僕は、帰りに黒いネイルを買うことを決めた。


7/12 追記

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俺は有言実行の男。

僕だけのあなぼこ

今でこそ髪を青に染め、ハンドサインで威嚇しやすいように中指だけ違う色のマニキュアで爪を塗り、メイクを始め、穴だらけの耳に気分でピアスを入れている僕だけれど、中高生の頃はまさに田舎の真面目な学生そのものだった。本当に真面目だったわけではない。ただ反抗の仕方というのがよくわからず、日の出暴走が未だ健在な地域に生まれ育ったにも関わらずファッションにおいてはみ出し、崩すということを知らなかっただけだ。

初めてピアスを開けたのは19歳の夏だった。皮膚科で呼ばれるのを待つ間、僕の頭にあったのは同級生のN君のことだった。


N君が転校してきたのは小学四年生のことだった。

土地柄のせいか転校生は珍しくなく、苗字が多少珍しいというだけの彼はすぐにクラスに馴染んでいた。とはいえ僕たちはあまり親しくなかったのでよくは覚えていない。その頃の僕は友達と一緒に自分たちのオリジナルのRPGを作ることに夢中で、かつて住んでいた西日本の話は興味の範疇外だったのだ。

N君は家にいるときはずっと勉強していると噂の秀才で、かといって知識をひけらかすこともなく、行事では自然とリーダーになり、足も早い、唯一の欠点といえば字がそこまでうまくないというくらいの完璧人間だった。日直の欄に書かれたN君の直筆の名前を見る度、人間ひとつくらい欠点はあるものだと妙に達観した気持ちで納得したのを覚えている。読めないほど汚いというわけではなく、今評するならば味がある、というくらいのものであったけれど。


そんな成績優秀な彼と、当時は神童と名高かった僕は中学進学に当たって同じ進学校に入学した。僕らの小学校から進学したのは僕とN君のふたりだけで、自然と同じになる帰り道、同窓のよしみとして僕らは時折喋るようになった。学校の前のバス停には一時間に一本しかバスが通らず、携帯もゲームも持てない中学生がすることと言ったら無為な駄弁りに時間を費やすことくらいだったからだ。

N君があっけらかんとして「ピアスを空けたいんだ」と言ったのは確か6月のテスト期間のことだった。梅雨時には珍しく晴れ間の覗く日で、一日の一番暑い時間帯に帰宅せざるをえなかった僕たちは制服の内側に噴き出すほどの汗をかきながらバスに乗り込んだ。

微弱すぎる冷房を浴びながら、N君の言ったことに僕は心から驚いていた。ピアスとは不良の空けるもので、中学校でもトップの成績を修め続けている彼とは一番遠いものだと思ったからだ。ちなみに僕は当時既に成績は底辺をうろつき、「平均点の半分以下が赤点なら50点取れば回避できる」と豪語しながら20点前後を修めては補習の日々を送っていた。僕は早熟なだけで神童なんかじゃなかったのだ。


「本当は高校生になったらすぐ空けたいんだけど、親が反対してるから大学生になったら、すぐ」

反対されるのも当然だと思った。ピアスなんて未成年がするものじゃない、何故だか僕はそう信じて疑わなかった。親にもらった体に穴を空けるなんて……という古式ゆかしい価値観を抱いていたわけでもないのに、あらゆる装飾品に対する忌避感があったのだ。

穴なんてひとつもないN君の耳を横目に見て、いずれここにさびしい光が宿るのだろうかと考えた。

「N君も人間だったんだねえ」

彼と友達ではない僕には賛成も反対もできず、そんな当たり前の気付きを感嘆とともに呟くことしかできなかった。

その日、バスの中に定期券を忘れて後日再発行した。


僕らが親しく話したのはその日が最後だった。何があったというわけでもない。彼は吹奏楽部の練習や生徒会の仕事に忙しく、僕は朝から晩まで補習の日々だったので帰宅時間が被らなかったのだ。地方の進学校特有の成績によるスクールカーストも手伝ったのだろう。成績の悪い生徒は先生からの覚えが悪く、同級生も「こいつは蔑んでいい」という空気が蔓延する。不登校の同級生と最下位争いをしていた僕はいわんやである。


中高一貫校だった学校を高2で辞める直前、クラスメイトがN君の陰口を叩いているところに行きあったことがある。廊下の掃除をしていた時、教室掃除の女子二人が喋っているのが不思議と鮮明に聞こえたのだ。

「N君ちょっとさぁウザいよね」

「委員長気取りで偉そうだし」

その時僕は、なんでもできるN君でも彼を嫌いになる人がいるのかと純粋に驚いた。彼は優しく、真面目で、頭も良く、運動もできて、バスケ部と吹奏楽部を兼部し、生徒会長も務め、少女漫画の白王子(当時は白王子という名称はメジャーではなかったが)が現実にいるならきっとN君のことに違いないはずなのに。

教室に割り込んでいって抗議をするでもなく、廊下のロッカーに背を預けて僕はよくわからない感心をしていた。そして、案外僕は彼のことが好きなのだなと唐突に理解した。

話題はいつしか僕の悪口に変わっていたので少し愉快になった。


学校を辞めた二年後、僕はバイト代を持って皮膚科へ赴いた。二年の間に僕の価値観はすっかり様変わりしていて、ぽこぽこと空けられたピアス穴に憧れを持つようになっていたのだ。

皮膚科で問診票を記入している間、N君のことを考えていた。彼の無垢な耳が今はどんな形をしているのだろうか想像しようとしてそれは無為であると諦めた。風の噂では東京の難関国公立大に進学し教師を目指していると聞いたけれど、教育実習に行くのにピアスだらけの耳じゃ断られるんじゃないかなあ、とだけ思った。


今僕は、かつての僕が不良の証だと思っていたピアスの穴を6つ空けている。

N君の耳に今ピアスが光っているかどうかは知らない。

メープルシロップは透明で色の薄いものの方が高級らしい(ワートレカナダ完凸備忘録)

Sugaring Off Party


WORLD TRE@SURE in CANADAお疲れ様でした。皆さまの事務所の直央は無事帰国できましたでしょうか。

おそらく何の参考にもならないワートレ完凸備忘録です。このブログはソシャゲ関連は控えて『カワイイ』を感じた時に書くと決めていたのですが、直央は可愛いから仕方ないね。



前提

・完凸イベSRデッキあること前提(すまない……)

・課金は最初のみ

・過去ボーダーを参考に、多分1000万ptと少し稼げば500位以内には入れると予測

・Pレベルやカードのレベリングのために通常ライブ、メモのために営業も忘れない

・なるべく1日6時間寝てご飯もほぼ3食食べる(朝は事情により時々食べられない)

味噌煮込みうどんは単純にブーム

・具は椎茸、ネギ、かまぼこ、卵、鳥もも肉コマ切れ、油揚げ、白菜など(余裕があれば惣菜海老天をつける)





前日まで

ディーラー雨彦に石を割っていたのでそもそも手持ち石は多くなかった(1000ないくらい)。雨彦は来なかった。

戦いに備えて食料を買う。冷凍うどんと干し椎茸と鶏肉。あとiTunesカード。

30連で隼人1枚。運が良いか悪いかは置いといてもやや心許ないがとりあえずこれで始めることに。

すぐにチェンジし、イベントまでにとにかくデッキに入れて通常プロデュース(石集めも兼ねる)とライブを回しレベリング。とはいえ寝落ちたのでそこまでレベルは上がらなかった。






イベント開始~1日目

この時点でのデッキはイベ上位完凸SRが4枚と無凸隼人(Lv.15くらい)。

PLv.は99とゲージ半分くらい。ここから「1日にPレベルが1上がる」を目安に走る。

スタダ全購入。手持ちのゼリーは20×60弱、50×70強、100×250、石は4000個前後。

WAYでゼリーが増えたのが心強い。

巻緒が手に入り次第アピタイの切れ目にチェンジ、通常ライブでもレベル上げ。

ポイント報酬は全て取り終えたあたりで就寝。目標を二桁順位に定める。

正確な数字は撮り忘れたのでわからないが、確か1日目終了時点で180万ptくらいで60位くらいだったはず。


朝 バナナ(別ゲームリアルプレゼント企画当選品)

昼 炒飯

味噌煮込みうどん






2日目

所用により夜まであまり触れず。

100位落ちしていて順位を上げるのに手間取るが、100位の壁を超えればそこそこ食い込むことができる。

350万pt手前くらいでどうしても麗さんが欲しくなり、なけなしの石でガシャる。隼人が1枚重なる。

ライブレベル30まで育てたかったが睡眠時間のためにLv.29と半分くらいで諦める。

ちなみにモバでもふレジェフルーツイベ予告寸劇が来て気が狂った(書いてる人はレジェ推し旗もふP)。

357万pt/65位で就寝。


朝 焼き林檎

昼 回転寿司

味噌煮込みうどん






3日目

アイテム所持数を見に行くと100ゼリーが180個になっていたのでこのままのペースでは終盤アイテム尽きるのでは?と気付くも今は考えないことにする。

ぼちぼち読んでなかったアイドルメモリーを開けて石集め、WAYやチェンジでゼリー集め。

542万pt/59位で就寝。


朝 パンケーキ&いちご

昼 ケンタッキー

味噌煮込みうどん(ネギ買い忘れた)






4日目

翌日予定があるので今日中にポイント稼いでおこうと思ったが買い物や平成たぬき合戦ぽんぽこ鑑賞などによりノルマも達成できず。ジブリで2番目に好きな映画です。

ちなみにモバで次イベもふレジェフルーツイベが確定して気が狂った(書いてる人はレジェ推し旗もふP)。

582万pt/91位で就寝。


朝 胃痛によりなし

昼 焼き魚定食

夜 パンケーキ






5日目

日付変更後までほぼ手付かずだったため154位に落ちている。

それ以外書くことないので味噌煮込みうどんのレシピでも書いておきますね。調味料以外の分量は好き勝手すればいいと思います。


味噌煮込みうどん(一人分)

※仕込み段階で干し椎茸は水で戻し、十字に切れ込みを入れておく。冷凍うどんはチンしておく。

①顆粒の和風だしを400mlのお湯に溶かし、中火で鶏肉を茹でる

②アクを取り、みりん小さじ1、醤油小さじ2、味噌大さじ1と1/2の順で加え、椎茸・油揚げ・野菜を入れる(野菜柔らか目が好みの場合)

③椎茸に味が染み込み、油揚げや白菜がしんなりしてきたらうどん・かまぼこ・卵を入れて煮込む(固め野菜が好きな場合はここで入れる)

④うどんと卵が好みの固さになったら海老天を添えて食べる

⑤おいしい!スープ全部飲むのはオススメしない。濃いから。


味噌は合わせ味噌使ってましたが、多分白味噌赤味噌>合わせ味噌の順でおいしい気がする。個人差。


朝 胃痛と遅刻によりなし

昼 遅刻によりなし

夜 ぶどう






6日目

休みによりお昼寝中以外はほぼステを触っている。アマプラで動画見ながら。ゾンサガのラップシーンいいですね。やっぱりラップはカッコいい。

寝る前に体力消費しようとしたら幸か不幸かアピタイが続き、気付けば夜は明け、当初の目標ポイントは稼ぎきっていた。

1005万pt/49位で就寝。空が明るい。


朝 鳥もつ煮

味噌煮込みうどん

夜 お茶漬け






7日目

ラスパ販売日。有償石が5個足りなかったので500パックを1つ買うのみ。

ちなみにモバでもふレジェフルーツイベが始まって気が狂いかけたが就寝直前に無事SR確定チケットを引けた(書いてる人はレジェ推し旗もふP)。

1092万pt/51位で就寝。


朝 時間がなくてなし

味噌煮込みうどん

夜 ラーメン






8日目(最終日)


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なんでやねん(書いてる人はレジェ推し旗もふP)


……というのっぴきならない状況になったので1197万pt/45位(16時時点)で一旦走るのはストップ。

ちなみにイベント終了前に駄目押しでガシャしましたが麗さんは来なかった。






イベント終了

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はい。



なお最終デッキはこんな感じです。

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飲んだゼリーは正確にはわかりませんが多分100ゼリー換算で270くらい。限定ゼリー数は流石に不明。幸いにも石は割らずに済んだ。

1日にPLvを1上げることを目安に走ったつもりでしたが途中走れなかった日もあるのでLv.99→Lv.105。





総括

・完凸は割といけるけど他ソシャゲに割く時間はほぼないと思った方がいい

・限定SSRは来ない

・休日1日を使えば500万pt稼ぐのは可能(ただしアピタイにもよる)

・WAYやスペシャルレッスンでもらえるゼリーを有効活用しよう

・担当は いつも続けて やってくる(ととのったよー)






なおワートレ未出立の担当はまだ二人います。

好きな服着て生きていけ

「お母さんオシャレな人嫌いなんだよね」


だからお父さんと結婚したの、という冗談交じりの母の言葉は、特段僕を抑圧するものではなかった。その時だってふぅん、で終わった。だけど僕が服装について全くの無知の状態のまま成人したのは事実だった。親を糾弾するつもりも、過去の自分を責めるつもりもない。ほとんど不在の両親の代わりに祖母に育てられ、本を読むしか能のない地方の少年にファッションに興味を持てという方が酷だ。


服装について自発的に行動したことがほとんどない。服を買ったことすらほとんどないのではないか。親戚の中で最も歳下である僕の元には必然的にお下がりが残されていた。祖父、母、3歳上の兄、1人の従兄、4人の従姉(のちに3人になる。兄と同い年だったひろちゃんは病死だった。追い越すどころかもう倍の年齢になってしまった)、顔も続柄も知らない遠縁の誰かたち。幸か不幸か、女性でも170cm以上が普通の家系で僕だけ平均よりやや……わずかに……心なしか……小さいので着られないものはほとんどなかった。幼少期の写真を見れば、どれも袖が余った服を着た少年が仏頂面でカメラを睨みつけている。


好きな服はなかったが嫌いな服はあった。ガーリーな服が好きな従姉のかなちゃんがくれる、リボンがついたピンクの服だった。そういう服を着ている時、ほぼ間違いなく僕は女の子に間違われた。「汚れるので捨ててもいい服で来てください」と言われた芋掘りの日は、かなちゃんがくれたピンクのロリータチックな服を着ていった。泥だらけになったその服は当然その日のうちに捨てられた。

ピンクが憎いのは物心ついた時からずっとだった。

女の子に間違われることが何より嫌だった。可愛いと言われれば一日中不機嫌になり、早熟ゆえ覗き始めたインターネットで覚えたミソジニーを口にし、「ジョシ」から遠いところにいようとしていた。一向に声変わりしないことを危ぶんで、殊更に「オトコ」でありたかった。暴力で男性性を誇示しようと暴れまわっていた。端的に言えば、ガキ大将だったのである。この過去の悪行については口を閉ざさざるをえない。


一般的に洋服の趣味に目覚める思春期の頃にも特に好きな服が定まることはなかった。というより、恐らく中高6年間を通してパジャマと肌着以外を買っていない。依然お下がりがもらえる立場だった所為もあるが、土日でも制服を着て学校に行かざるを得ない落ちこぼれだったからだ。微妙な色合いのネクタイを胸元に置くブレザーは近隣の学校と比較してもオシャレとは言い難く、「ダサいよな」と言い合いつつも、質実こそが美徳と言われた僕たちは真面目に第一ボタンまで閉め、ヘソ下までズボンを上げて盆正月を除く360日を過ごしていた。


過ごしていたが、結局学校はやめた。高校2年生の晩春だった。底辺でもしがみついていた進学校の末席は、1人の英語教師の言葉によって呆気なく色を失った。ここに関しては割愛する。

いずれにせよ、僕は暑くなり始めた地方都市の中で無職となった。16歳の無職が着てもいい学校制服などあるはずもない。僕のクローゼットにはパジャマと肌着と紺の靴下、お下がりのパーカー、僕の名前だけあだ名ではなく苗字で刻印されたクラスTシャツしかなかった。辟易するほどの黒と紺、時々ベージュ。おじさんかよ。そういえば休日のお父さんルックといえば白のポロシャツにベージュのチノパンという偏見があるが、実父の「休日のお父さんルック」に関して記憶に残っている最後の姿はピンクグレープフルーツ色のシャツと白の麻のパンツだ。その日を境に父は姿を消した。あのピンクグレープフルーツ色のシャツがどうなったのかだけが気になる。多分似合わない色なので着たいわけではない。


今もクローゼットを開けてみれば、日々を最低限過ごすためのパーカーやジャケットしか入っていない。しかし一般的なオタク男性のクローゼットの中身とそう変わらないのではないかと思う。この国には未だ男性のファッションというものに無頓着だ。女性にばかり華やかさを求め、男性はヒゲさえ剃って黒髪でいれば適当でも許される。というか、諦められている。あまりにダサい二律背反である。じゃあ男にも女にも所属できない人間は何を着れば良いのだろうか。




ところで最近、友人がaxesやAmavelに目覚めた。

知り合ったのは高校生の時だが、当時はパーカーばかり着ていた。正直言うと、非常に過去の自分と似ているように思えた。

それが最近ではよくお人形さんのような服を着ている。会う時は大抵セーラーリュック、ベルトやリボンなど工夫したちょい足しポイントを教えてくれる。

いいなあ、と思った。


推しに会うためにオシャレして上京してくるフォロワーがいる。

バチバチのピアスと青髪で宇宙柄のパーカーを着て、「これが私の鎧だ」と言うフォロワーがいる。

「クリスマスだからタトゥー増やしてきた」と写真をあげていたフォロワーがいる。

みんな、いいなあ、と思った。


先月、ずっと憧れていたきゃりーぱみゅぱみゅのコンサートに行った。夢のような光景で、幻のように楽しくて、魔法のように綺麗な夜だった。何より、普段行くアイマスのライブと違うのは観客もコスプレをしていることだった。アリスのような衣装の少女、二人合わせてつけまばっちりの目を表現したドレスの中学生くらいの女の子たち。客層が違うのでどちらを批判するわけでもない。

だけど、質問コーナーで手を挙げた自分の腕は、間に合わせのベージュのセーターに包まれていた。大学受験の頃から着ているものだ。だっせぇな、という気持ちが頭の隅に浮かんだ。


今月末に同人イベントがある。サークル参加をするのは3回目だ。前回と前々回は夏の参加だったので、冬のイベントは初めてだ。そして気付くのだ、まともな冬服がないことに。

「いいなあ」の仲間に僕もなりたかった。他人と会う時くらい、イカす自分でありたかった。


買うしかねぇ。とびきりイカす、皮膚のように馴染む洋服を。



そんな時、ACDC ragの洋服がツイートで回ってきた。スーパービッグサイズのパーカー。袖は余り、裾はワンピースのように長い。くまちゃん柄が最高にクールだ。

これだ、と思った。通販するつもりだったが、翌々日には原宿の実店舗に降り立っていた。

先日行ったパーソナルカラー診断ではブルベ夏だと言われたので、柄のくまちゃんはブルーにした。青は好きだ。青いし。

買って帰って、袖を通して、 長い裾をつまんでくるくる回ってみた。「自分で買った好きな服を着ている」というだけで泣いてしまいそうだった。鏡の中で佇む色の抜けたシルバーの髪の人間は男とも女ともつかない。「女っぽく見える男だから」という理由で仕事を不採用になりかけたこともばかばかしくなるほどに、ただの僕がそこにいるだけだった。可愛い自分がそこにいるだけだった。


最近になって時々、かなちゃんにもらった、リボンがついたピンクの服を思い出す。

ピンクも、可愛いことも、何の罪でもなかった。本当は僕の仲間だった。だけどあの服は僕のためのもではなかった。ほんのわずかな罪悪感とともに、そう思う。


「自分はもしかして自分を愛してもいいのではないか」「自分はもしかして可愛いのではないか」と思い始めて約3年。『カワイイは研鑽する全ての者のために』という記事を書いて1年半(※)。なんと遅々とした行動だろうか。だが行動に耐えないほど遅いというわけではない。足は動く。服は着られる。僕はまだ若い。10年経ったって、20年経ったって、100年経ったって、僕は若い。くまちゃんのパーカーを着て、パンダのリュックを背負って、宝石みたいなピアスをつけて。

嫌われたり、たまに好かれたり、陰口を叩かれたりしながらも。それでも好きな服を着て、Beauty Plusで自撮りをして、ブログにあげて、カワイイについて書く権利は誰にも奪えない。

自撮りの中の自分はにやにやと笑っていた。




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最初目元隠してなかったけど、可愛さを誇るよりネットに素顔をあげるビビりの方が勝ったのでモザイクをかけた。可愛さの波動を感じてほしい。


https://udur.hatenablog.com/entry/2018/08/30/200139